だけど、そうじゃなかった。

「夕海、一旦落ち着こう?駿、ここだと人もいっぱいだし、露店の裏までとりあえず移動しよう」
「オッケー。陽太、悪いんだけどここで買ったブルーハワイのかき氷二つ、裏まで持ってきてくれるか」
「了解」


三人は私を囲んでそんな言葉を交わしたかと思ったら、詩織は私のすぐそばに立ち、駿は自分の腕を私の腕にガッチリ固め、露店の裏側まで強引に進んでいく。


「どうして?何でこんなことするの?駿だって見たでしょう!?」
「ちょっと黙ってろ」
「何で?あれは、海斗だっ」
「いい加減目を覚ませよ!」


まだ言いかけていた私の声に、駿の大きな声が重なる。


「人違いだって言われただろ?確かにそっくりだったよ、あいつに本当に似てた。でも!海斗じゃない。頼むから、もう受け止めてくれよ…」


駿はそう言うと、歩いていた足を止め、私をぐっと引き寄せその場で抱きしめてきた。


「海斗はもういない」
「いたじゃん!」
「聞け、夕海。おじさんも、三年見つからなければ区切りをつけて、あいつが死んだって。そう受け止めるって言ってただろ?」
「…や。嫌!」
「夕海!」
「嫌だ…追いかけなきゃ。やっと、やっと見つけたのに…」
「だから別人なんだって!さっきの人は、海斗じゃない!もう、いないんだよ。死んだんだよ、あいつは」


耳元で響く、掠れたような悲しい声。

そしてその直後、肩に落ちてきた駿の涙に気付いた私は、崩れるようにその場にうずくまった。