自分も断るから私にも断れだなんて、そんなの理由にはならないし随分勝手だと思った。
だけど…そう思った直後。
「なんでかって理由は、ちゃんとある」
突然そう言ったかと思ったら、そばにいた詩織たちにちらっと視線を向けてから話し始めた。
「このタイミングで言う話じゃないとは思うけど、まぁ…じゃあ、いつ言うんだって話になるし」
「なっ…何の話?」
「だから、俺が今、橋本の誘いを断れって言った…理由だよ」
苛立った様子で頭をガシガシ掻いた海斗は、そのまま数秒黙りこんだ。
理由があるなんて言われてしまうと、もちろん私も知りたくなって静かに話の続きを待った。
すると、俯き気味に頭を掻いていた海斗が顔を上げて。
「ムカつくから」
と…たった一言だけ口にした。
「ムカつくって…何よ」
そんなことを言われても、理由として受け取るには理解し難かった。
だけど、その直後。
「夕海は俺と一緒に行くって決まってんの。今までもそうだったし、これからもだ。だから橋本と行くとかワケわかんないこと言ってイライラさせんな」
海斗はそう言うと、私の頭をポンっと軽く弾いた。
今までも、これからも…決まってる?
イライラさせんなって、どういう意味?
「えっ…イライラって、どういう…」
「 は?おまえ鈍感?」
「な、何が?」
「はぁ?今ので伝わるだろ普通」
わからないから聞いたのに、海斗はそう言うと呆れたように笑って。
「なぁ詩織。今の俺の言葉聞いてたら、普通は伝わるよな?」
と、後ろ側にいた詩織を振り返った。