浜辺といっても、特別広いわけではない。
岩場もあるし小石もゴロゴロしている小さな浜辺だ。

夏場でも海の家なんて洒落たものはないこの場所は、夏以外の寒い季節はもちろんのこと、こんな暑い日でもやっぱりひと気が少ない。

海水浴に行くなら、それこそみんな海の家があるような大きなビーチに行くんだと思う。

どうせ今日も誰もいないかと思っていたけれど、浜辺の端っこの岩場にバケツとスコップを手にした小さな子供二人と、そのお母さんらしき人の姿が見えた。

先客がいたか…そう思いながら静かに浜辺に腰をおろす。

太陽の光に照らされた海面がキラキラしながら揺れているのを見つめ、そっと目を閉じた。

打ち寄せる波の音と、時折聞こえる子供たちのはしゃぐ声。
ふと、遠い昔を思い出した。

今よりもずっと小さく幼かった頃。
私と海斗も、岩場で小さなカニや魚を探したりしていたっけ。

波打ち際で水を掛け合った。
疲れたら、浜辺に寝っ転がった。

この浜辺には、海斗との思い出がたくさんある。