海が近いこの町にはいつも強い潮の香りが漂っていて、今日も漁港に近づくにつれその匂いはより一層強くなっていく。

嗅ぎ慣れた地元の人は特になんとも思わないだろうけど、慣れない人の中にはこの潮風の匂いが苦手に感じる人もいるかもしれない。

でも、それにさえ慣れてしまえば本当にいい町だと思う。
都会にはない、ゆったりとした時間が流れる港町。

細い裏道を抜けると、目の前に広がるのは太平洋の海だ。

青い空に青い海。
同じ青でも、決して交わることのないそれぞれの色。
そんな青一色の景色が見られるこの町が…ずっと好きだった。

沿岸沿いの道まで出ると、海はもう、ずっと目の前にある。

キーッと鳴る、錆びたブレーキ音。

私はおもむろに自転車を止めると、漁港に行く前に少し浜辺に立ち寄ることにした。