声のした方に目を向けると、少し離れた後方にいたおじさんが私の元まで小走りで駆けてきた。


「お疲れさん。今日は、ありがとな」


そしてそんな短い言葉のあと私の頭をポンポンっと撫でたおじさんは、少し間を空けて私に言った。


「夕海、明日は何か用事あるか?」

そんな問いかけに、首を振りながら「特にない」と答える。


「そうか。じゃあ明日の昼、漁港市場の食堂においで。夕海に話しておきたいことがあるから、飯でも食べながら話そう」


何故か真剣な眼差しでそう言ってきたおじさんにこくりと頷くと、気をつけて帰れよと優しく微笑んで私たちを見送ってくれた。



「やっと涼しくなってきたね」
「そうか?蒸し蒸しするけどなぁ」
「昼間に比べたら天国だろ」


三人の会話を聞きながら、ひと気もかなり減ってしまった川沿いの道を進みたどり着いた臨時の駐輪場。


「夕海、いける?」
「うん大丈夫」


駿の言葉にそう答えると、それぞれ自分の自転車にまたがった私たちは夜道を颯爽と走り出した。