「ごめんな、夕海」
泣き止むまでそばで静かに待っていると、しばらくして顔を上げた陽ちゃんは空を見上げながら「ハァッ」と大きな息を吐いた。
そして、シーンとしていた空気を切り替えるようにパチンと手を叩く。
「戻ろうか」
その声に頷くと、陽ちゃんは黙ったまま私の前を歩いていった。
「遅かったなぁ、何してたんだ?」
駐車場に戻ると、陽ちゃんのお父さんは袋の中のビールを取り出しながら私たちを交互に見てそう聞いてきた。
「んー、アキラじいちゃんと話してたの。久しぶりだったから、色々話してたら長くなっちゃって」
私が先にそう言うと、陽ちゃんはうつむきながら「そうそう」と相槌を打ちながらつぶやく。
駐車場が明るくないおかげで、周囲に陽ちゃんの表情ははっきりとは見えない。
泣いたことを気付かれたくないからか、陽ちゃんは空いていた長椅子に体を倒すと「あー、疲れた」と言ってそのまま眠るように目を閉じてしまった。
私も何もなかったかのように元いた場所に腰をおろすと、なんだか力が抜けて小さなため息がこぼれた。
それから一時間ほど経つとようやく宴もお開きになり、片付けは大人に任せることになった私たちは、一足先に家路につくため河川敷近くに止めてある自転車を取りにいくことになった。
「じゃあ、お先に帰らせてもらうね!」
ゴミ袋を片手に辺りを掃除している親たちに声をかけてから、歩き出そうと踏み出した…その時。
「夕海」
私をそう呼び止めたのは、海斗のお父さんの声だった。