「あーあっ…もう、半分くらい溶けちゃったね。ごめん駿」

そう言いながら、陽ちゃんが持ってくれていたかき氷に手を伸ばした。

だけど…ブルーハワイの鮮やかな青色は、おさまりかけていた鼓動を再び加速させていく。

「やっぱり、イチゴにすれば良かったかなぁ」

精一杯の強がりを口にして、スプーンを手にした。
そしてそれを口に運ぶと、冷たい感覚が口内に広がると同時に胸が締め付けられるように痛くなった。

でも、もうこれ以上みんなに心配はかけられない。
私が悲しい顔をしたら、駿も詩織も陽ちゃんも、みんなが同じように悲しくなって、楽しいはずの夏祭りなのにみんなが笑えなくなる。


「うん、やっぱりかき氷はイチゴだよね。詩織これ食べてよ。私、イチゴ味買い直してくるから」
「夕海!」


持っていたかき氷を詩織に渡して歩き出すと、駿が慌てたようにすぐに呼び止めてきた。


「大丈夫、ちゃんと戻ってくるから」


振り返ってそう言うと、心配そうな表情を浮かべながらも駿は小さく頷いてくれた。


「っていうか、かき氷屋さんここだし。見えてるでしょ?」


笑顔で後ろを指差して、ね?と問いかけた。
ほんの少し歩いただけで、露店はすぐそこにある。
安心してほしい思いでそう言うと、駿はホッとした表情で「おう」と微笑んでくれた。