「そんなことがあったのか…」
「ごめん、呑気に焼きそばなんて買いにいっちゃってて」


少しずつ落ち着きを取り戻していく私のそばで、駿が一連の流れを二人に説明すると、話を聞き終えた詩織と陽ちゃんは座り込んだままの私の前に同じ目線の高さで屈んだ。


「うわー、夕海、目の下黒っ!」

わざとらしく目を丸くした陽ちゃんは、私をジッと見つめ「パンダかよ」とボソリと言った。


「あはは、本当だーマスカラ取れちゃってる!ほら、鏡見てみ?」


そしてそんな陽ちゃんの隣からは、やけに明るく振る舞う詩織がそう言ってコンパクトミラーを差し出してくれた。

小さく頷いた私は、なんとか笑顔を作りその鏡を受け取ると、そっとそれを開いた。


「…最悪」

そう呟いた私の瞳には、その言葉通りの最悪な自分の顔が映っていた。
目の周りは真っ赤に腫れぼったくなったうえ、下まぶたは流れたマスカラのせいで黒く滲んでいる。


「本当、パンダみたい」

やっと冷静になれた私は、カバンからティッシュを取り出し汚れた目の周りを淡々と拭き取ると、ようやく腰を上げ立ち上がった。