どこに行ってもお母さんに会わなかったのは、こういう理由があったからなんだ。



「お母さん、びっくりされましたよね。今だって、受け入れられないことばっかりでしょうし」


「篤見さんの言う通り、何もできなくて惨めです。母子家庭だから、私しか娘を守れる人が居ないのに、守ってあげられなかったなんて、母親失格です…」





話が途切れて、長い沈黙が流れ始めた。


僕が、ちひろちゃんに何もできなくて惨めだと思う以上に、お母さんの方が、娘を守れなくて惨めだという思いが強いと思う。


半年間、ただ娘の帰りを待つ。

母親としてそんな惨めなことはない。



それでも、ちひろちゃんが家に戻ったことが、お母さんへの信頼の表れだと、僕は思う。