先生にそれだけを言われて、相談というには早すぎる診察スピードで、部屋から追い出された。



僕はちひろちゃんの家族でなければ、彼氏でもない。たまたま担当した事件の被害者。


何だか鋭い刀が胸に刺さる感覚。

助けたいと思う気持ちだけで、手を差し伸べてはいけないんだろうか。



善意を否定されたのは初めてだった。



病室に戻ると、ちひろちゃんが不思議そうに首を傾げて僕を見る。




「刑事さん、元気ないです。何かあったんですか?」





本当に少しずつだけど、僕が部屋に居ても笑顔を見せてくれるようになった。


拒否されることもなくなり、ようやく打ち解けて来た頃だろうか。



そんなちひろちゃんに妊娠を伝えたら、せっかく回復した精神的苦痛がさらに深みを増してしまうし、開放された心も一気に閉まってしまう。