ゆっくり音を立てずに近づき、犯人が班長と話すリズムに合わせて、慎重に床に足をつけていく。


そして犯人までのあと僅かな距離、右足を床に置くと、ギシッと古くなった木が軋む音がして、犯人が僕に気づいて後ろに振り返った。




「篤見!今だ!」




班長の叫び声に、僕は犯人の足元をすくうように飛び込み、班長は振り向いた犯人の背後から上半身に抱きつくように飛び込んだ。



逃げ場のない犯人は床に顔面を打ち付けて、鼻が折れたと小さな声で呻いている。




「取り押さえた!」




何とか、誘拐事件の解決に成功した。