その時は聴取の場にいなかったけど、今回同じことを経験するかもしれないと想像するだけで、逃げ出したくなった。




聞いていた時間になっても聴取の部屋には誰も現れず、班長と取り調べる内容を打ち合わせしていると、20分遅れで容疑者が連れられてきた。




「留置場で容疑者が暴れたため、遅れました。鎮静剤を5分前に投与しております」




連れてきた警察官の言うように、鎮静剤がよく効いているようで、指示されるがままに大人しく椅子に腰掛け、虚な目でただ前を向いている。


この男は自分の心にある悪と向き合い、罪を償ってくれるだろうか。