そこから会話が続くことはなく、班長は〝言わん方が良かったな。すまん、帰る〟とだけ、ほぼ聞こえない声を出して、帰ろうとした。




「班長!お店変えません?」




すぐにお店を出て、今度は静かでちゃんと声が聞こえる、バーに来た。

ここなら〝そう言う話〟も、気兼ねなくできる。



「さっきは悪いこと言ったな」


「いや、気づいてなかったんで。班長に言われて気づくなんて」


「で?今日はずっとぼーっとしてたけど、何があったんだ?」


「すみません…。今日仕事行く前に、あの子の家に寄ったんです。その時に、僕には辛い気持ちなんて分かるはずないって言われたのがショックで」


「篤見…。あの子にぞっこんじゃん」



これは、ぞっこんなのか?


僕はただ、ちひろちゃんを助けたいと思っているだけで、好きとかそういうのではないと思ってる。