教室にバッグを取りに行った礼司を校門前で待つ。

先に帰ろうとはせず高野くんも一緒に待ってくれた。


「高野くん、本当にありがとうね」

「また明日もやる?」

「ううん、これ以上は高野くんに迷惑かけられないよ。明日は自分で頑張ってみる」

「…そっか。俺で良かったらいつでも呼んで」

「うん。高野くんも私にできることあったらなんでも言ってね。このお礼をしたいんだ…まぁ、私にできることは少ないと思うけど…」

「そんなことないよ。ありがと」


高野くんの腕が伸びてくる。

ぽんっと優しく頭に触れた手は髪を撫でた。

私を励ましてくれたのだろう。すぐに離れたけれど、目で追ってしまう。


「ゆきな、」

小さく囁かれた言葉は聞いたことないくらい甘いものだった。