「着いた、着いた!」

屋上に通じる扉の前で腰を下ろした。


「日当たり良好で、静かで、気に入ったかも」

「本当?良かった」

「教えてくれてありがとう」

「うん」

屋上の扉の鍵が閉まっていることを知っている生徒は、滅多(めった)にこの場所に近付かない。入学してからずっと私の特等席だ。

窓から太陽の光が差し込み、階段の踊り場を照らすが、私たちのいる場所までは届かず、ちょうど日影になっていて日焼けの心配もないから居心地がいい。


「彼女いるのかなあ?」

「え?」

「いや、高野くん、彼女いるのかなって」


コンビニの袋からツナおにぎりと、たまごサンドを取り出した多絵はあぐらをかきながら言った。