「よし、そろそろ行こうか」

「うん」


これ以上、高野くんといるとその唇を意識していまいそうで、彼から切り上げてくれたことにホッとする。


「俺、こっちだから」

肉屋の角を指差す。


「そっか。今日はありがとうね」

「ありがと。また明日」

「うん、また明日」


手を振って別れる。

数歩、進んだところで振り返り、こちらを見て笑ってくれるところも高野くんらしい。

大きく手を振り返して、私たちは別れた。


高野くんがいい人すぎて、なんだか夢みたいだった。