朝の挨拶だけが目的だったようで、高野くんの視線はすぐに単語帳に戻っていった。

朝から勉強…さすがだよ。


実はこの学校に入って一番最初に名前を覚えたのが、入学式の答辞を読んでいた高野くんだった。


高野(たかの) 陽太(ようた)

体育館の壇上に立つ彼はよく通る声で堂々と発言していた。

その姿は眩しくて、私の中学生活の憧れそのものだと思った。

そんな彼に名前を呼ばれてる?


私にとって青春の象徴である高野くんは遠い存在だ。

例え、隣りの席であっても。


優しい高野くんはあっさり友達になってくれたけど、彼の前でも私らしくいられるのだろうか。