お母さんの叱咤(しった)が聞いたのか翌日、礼司は私より早く登校していた。

昨日はお母さんに今すぐ家に戻るように言われ、食べかけのドーナツを私に押し付けた礼司は慌てて帰って行った。

面白かったな…。


教室に入り、前方の扉を閉めながら口を開ける。


「…おはよう」

思ったより小さい声になってしまったけど、近くにいた生徒の数名が「おはよう」と返してくれた。

良かった、届いた…。


礼司は隣りの席の平田くんと数名の男子生徒とゲームの話で盛り上がっていたため、挨拶することなく席に着く。


「雪菜、おはよ」

「お、おはよ!」


突然、名前を呼ばれて先程より大きな声が出てしまった。


高野くんだ。

少しの眠さも感じさせない凛とした表情で私を見上げている。