礼司相手だとあまり気を遣わないし、どちらかと言ったら思っていることを口に出してしまう。


「礼司は特別だから」

「…そうか」


そうなんだよ、礼司は私の中では特別なんだ。他の子に対して同じようにはいかないよ。


「俺にとっても、おまえは…ヤバっ」


携帯のバイブが震えて焦っている。


「母親だよ…」

「遅刻のことバレたんじゃないの?」

「くそ、担任!」


通話ボタンを押して無言で電話に出ると、私のところまでお母さんの怒号が響いた。

言い訳を連ねながら、目尻を下げて明らかに困っている礼司に笑ってしまう。

彼がなにを言いかけたかなんて、簡単に想像できる。

ありがとう。

本人にそう伝えるのは照れくさいし、からかわれそうだから心の中でお礼を言っておく。