有名チェーン店のドーナツを3つも礼司に奢ってしまった。2年生への進級お祝いにお小遣い多めに貰っていて良かった…。

嬉しかったのだ。
同じ高校に誘ってくれたことが、とても嬉しかった。


窓際の4人がけの席に座って、礼司はスマホゲームを片手に器用にドーナツを食べている。

しかも3つとも全てチョコドーナツだ。
たまには違う味を選べばいいのにね。


「はぁ、やっぱりラスボスは強いな」

「また新しいゲームを始めたの?」

「うん」

「ゲームのやりすぎで、今朝も寝坊したんでしょ」


礼司のお母さんは看護師で夜勤もあるから、きっと今朝は仕事だったのだろう。そうでなければ寝起きの悪い息子を叩き起こしていたはずだ。


「まぁな」

「明日はちゃんと来なよ」

「分かってるって」


礼司となら普通に会話できるのにな。

なんで他の人と話そうと思うと緊張して、上手く言葉が見つからないのだろう。

高野くんに対してもそうだね、って相槌打つばかりだったよね。

あ…もう、高野くん呼びに戻ってしまった。