礼司は絶対に頷いてはくれないだろうけど、本当に心配かけていたんだね。

礼司がいたからここまで来れたし、今日だって陽太に好きと言うことができたんだ。


「礼司、いつもありがとう」

何度お礼を言っても足りないね。

「…もう一杯、買ってくるわ」

照れ隠しだろう。礼司はキッチンカーに向かって走り出す。それとも、私たちを2人にしてくれたのかな?


「新学期が始まった頃、雪菜がよそよそしくて、まるで知らない人のように扱われて落ち込んでたんだ…。嫌われたのかなって…悩んで…そんな俺に礼司が背中を押してくれたんだ。礼司がいなかったら、雪菜に好きって言えてないと思う」

「うん…。礼司は私たちのことずっと応援してくれていたんだね」

「ーーそれでも、礼司には悪いけど、雪菜は渡せない…」

ハンカチを握る私の右手に、陽太の温かい手が重なった。

なんで礼司?幼馴染だから?


「俺のこと祈ってくれて、願ってくれてありがとう。雪菜のおかげで俺は生きられた」


陽太が笑ってくれる。

土砂降りの雨の中、(うつろ)な目で空を(あお)いでいた陽太はもう、いない。

手だってこんなにあったかい。

「雪菜が好きって言ってくれて、嬉しかったよ」

「うん、やっと言えた…」