陽太がハンカチを貸してくれた。

私だけが全て忘れて、悩んでいる陽太をひとりにしてしまったんだ。


「私はまた好きって言ってもらえて嬉しかったよ」

「雪菜…」


一度別れたけれど、お互いに忘れられなかった。また2人の絆が強くなったような気がする。


「礼司からは雪菜と向き合えって背中を押してもらったのに、弱い俺はそれを突っぱねて、気まずくしちゃって…本当にごめん」

陽太は礼司に向けて頭を下げる。


「別に、いいよ。済んだことだろう」

そっか、陽太はひとりじゃなかった。
礼司だけは私たちの味方でいてくれたんだねーーって、ん?まさかーー?


「2人の喧嘩の原因って…」

「おまえに決まってんだろ」


不機嫌そうに礼司は吐き捨てた。

礼司の友達のことがきっかけで仲違(なかたが)いしていると聞いていたけど、その友達が私?


「あははっ、そうなの?」

「はあ?なに笑ってるんだよ!」

なんだかおかしくて、涙を流しながら笑ってしまった。


「雪菜の怪我のことも礼司が教えてくれたんだ。俺も入院しててお見舞いには行けなかったけれど、礼司がこまめに報告したくれたから、安心できたんだ」

「そっか…礼司、ありがとう」

そんなこと、一言も言ってくれなかった。
私の知らないところで動いてくれていたんだね。

「なんもしてねぇよ」

ぶっきらぼうな優しさが染みる。


「あのね、」

貸してもらったハンカチで涙を拭いて、背筋を伸ばした。


「今度は私の話を聞いて欲しいの」

2人が頷いてくれる。

それから私の身に起きたことを全て話した。