礼司の言葉を受けて、陽太の方を見ると大きく頷いてくれた。


そっか、そうだったんだ。
私とのこと、ちゃんと覚えてくれているんだ。

良かった…。本当に、良かった。
胸の奥がすっと軽くなる。


「そうだね。雪菜にはまだちゃんと、伝えられてなかったね。俺、治ったんだ。いや、正確には嘘みたいに腫瘍(しゅよう)が無くなったんだ」

「え?」

「手術前の最終検査で、不思議なことに腫瘍が消えていた。医師も信じられないって、奇跡だって言ってた」

奇跡…。
もしかして、おばあちゃんが?


「もっと早く伝えたかったんだけど、またいつ再発するかも分からなくて、怖くて言い出せなかった。ずっと勇気が出なかった…」

「そうだったんだ…」

「それに腫瘍が消えた途端、雪菜が階段から落ちたと聞いて怖くなった。自分が助かりたいと願ったから、代わりに雪菜が犠牲(ぎせい)になってしまったんじゃないかって…俺といたら、雪菜がもっと傷つくんじゃないかって…そう思っているのに、雪菜の傍から離れたくなくて近付いて、矛盾してるよな…」


私の知らなかった陽太の想いを打ち明けられて、止まりかけていた涙腺が再び(ゆる)んでしまう。