「それで?話って?」

礼司が急かす。
彼はお母さんとの約束通り30分という時間を必ず守るだろう。

病院前の広場に止まっていたキッチンカーで搾りたてのみかんジュースを買い、パラソル付きのテーブル席に座った。私の正面に2人が座る。


「礼司。前は知らないって言ってたけど、コレ、見たことあるよね?」


通学バッグから英語の単語帳を取り出して、落書きが描かれたページを開く。

可愛らしい子犬の絵と、「ガンバレ」の文字。


全部を思い出すことができたから、知っている。

これは中学1年生の夏、陽太が私のために描いてくれたものだった。

そしてその場に礼司もいたんだ。