次の瞬間、社殿から眩しいほどの光が発せられて、
思わず目を閉じてしまった。


「雪菜、」

雨音は消え、静寂の中から(かす)かに懐かしい声がした。


「雪菜、しっかりしなさい」

名前を呼ばれて反射的に目を開ければ、大きく、雪のように真っ白なキツネが目の前に立っていた。

…え、キツネ……?

首元に巻いている花柄のチーフはおばあちゃんがよく身につけていたものだった。喜寿のプレゼントにあげたらとても喜んでくれたのだ。

「おばあちゃんなの…?」


キツネは私の濡れた頬に毛並みのいい尻尾(しっぽ)()り付けた。


「ええ、そうよ。雪菜、大きくなったわねぇ」

優しい声。何度も私を(なぐさ)めてくれた穏やかな声。


「おばあちゃん!」

戸惑いながら、キツネの頬に手を伸ばす。


「おばあちゃん、元気なの!?」

「死者に元気か?とは、おもしろいことを聞くねぇ」

キツネはくすくすと笑った。
目を閉じて笑う、その笑い方はおばあちゃんに似ていた。