雨の中にいる。

さっきまで小雨だった天候が激しく荒れ、強い風と大粒な雫が顔にあたる。


「ごめんーー別れて欲しい」

「っ、………」

話がある、と真剣な表情で言われた時、嫌な予感がした。だって今日、陽太は私と目を一度も合わせてくれていない。


「ごめんね」


謝罪の言葉を聞き、胸が押し(つぶ)されそうになる。

痛い、痛い、痛いよ。

でも陽太の方がもっと辛そうで悲しい表情をしている。


「俺、病気なんだ。脳に腫瘍(しゅよう)ができて、そう長くは生きられないらしい」

「ながくは、っ……」


声が震える。


「なるべく身体に負担がかかるようなことは避けて、治療に専念をするつもりだ。陸上部にも退部届を出してきた。学校にも…」

「……」

高野くんが言葉に詰まる。

光が失われた目で、クマが目立つ疲れた顔でぼんやりとこちらを見た。

やっぱり視線は合わない。