高野くんは私の言葉を静かに待っていてくれた。
奥歯を噛み締めてから口を開く。


「高野くんが好きです」


ーーーーようやく言えた。


少し声は震えてしまったけれど、伝わったはずだ。

一瞬、驚いたように目を見開いてから、高野くんは白い歯を見せて笑ってくれた。


「雪菜ーー」

手を伸ばしてくれる。


良かった!拒まれはしなかった!

「高野くん!」

その手を掴もうと一歩踏み出したところ、


「うっ、」

激しい痛みが脳裏を貫く。

頭が割れてしまうような、切り裂かれるような痛み。


「雪菜!」

地面に膝をつく。
もう立っていられなかった。

「頭が…」

両手で頭を押さえてうずくまる。



ーー声が、聞こえる。

壊れたテレビのようにザーザーと、(あら)い映像が目の前に広がる。


「雪菜!先生、呼んでくるから!」

高野くんの声が遠くで聞こえる。

行かないで…。

声にならない声が、喉を(かす)めた。