声援が聞こえる。礼司のうるさすぎる応援が聞こえたが、笑う余裕もなかった。

校庭一周が長く感じる。練習の時よりずっと、ゴールが遠い気がした。とにかく足を回転させるものの、後ろから迫ってくる足音が徐々に近くなってきて焦る。

あっーー。

努力も(むな)しく、半周したところで背後から2人に抜かされてしまう。

後2人の足音も大きくなってきているが、振り返ることなく前にある背中を追いかけた。

前だけ向いてこれ以上、離されないようにしないと。


『もし抜かされたとしても大丈夫。俺が必ず巻き返すから。気負わなくていいよ』

最後の練習で、高野くんがそう声をかけてくれた。
力強い言葉に救われた。

私の後ろに高野くんが控えていることが心強く、少しでも前に進もうともがく。

汗だくになりながらも諦めずに走り、

「雪菜、もう少し!!」

高野くんの背中がはっきり見える位置まで辿り着いた。