礼司に押されるようにして校門をくぐった。

「もう離して、痛いよ」

抗議(こうぎ)すれば、あっさりリュックを掴む手が離れる。


「まだ痛むのか?」

「ん?ああ…」


礼司が怖い顔で(にら)んでくるものだから何事かと思って足を止めたが、すぐに心当たりを思いつく。


「もう痛くないよ。春休みで完治したの」


実は春休みが始まる前日に、家の近くにある神社の石段から転がり落ちてしまったのだ。よく覚えていないが、何もないところで(つまづ)いたことが原因のようで恥ずかしい。

鈍臭(どんくさ)いよね。

ちょうど学校が春休みで礼司以外の人にはバレずに済んだ。お母さんが学校に連絡すると言ったが、なんとか阻止したのだ。