「見ないでよ…」

「ごめん、でも、」


両足でゆっくりブランコを前後に揺らしていた高野くんは、地面を強く()った。


「俺、ずっと雪菜のことを見てるよ。1年生の頃も、今も」


「え?、高野くん?」


1年生の頃?私、高野くんの前で悪目立(わるめだ)ちするようなことしたっけ?

高野くんの横顔を目で追う。

いつも呼びかけたらすぐにこちらを向いてくれるのに、遠くを見つめたままだ。

ブランコをこぐ風の音と、鈍い金属音が規則正しく聞こえる。



「雪菜のことが、好きなんだ」



柔らかな声が耳の奥に届いた瞬間、私の脳は考えることを止めた。