広いベンチではないので肩と肩が触れる。

触れている部分が熱い。肩から伝わる熱が全身に行き渡り、体温が一気に上昇する。

さっきまでとは別の意味で恥ずかしい…。


「このまま、ずっと2人でいたいな」

目を閉じた高野くんは笑った。

「……私も」

スッと言葉に出た。

至近距離に心臓がうるさいけれど、離れたくない。高野くんの温度を少しでも長く感じていたい。


「……俺、完治したんだ」

「え?」

「本当は陸上もできるくらいに、回復してるんだ」

「そうなの!?」


足の怪我が治ったんだ!


「でも怖くて。また同じことを繰り返すのでないかって、怖くて…ずっと立ち止まったままだ」

「高野くん…」

陸上部を続けていれば、もしかしたらまた怪我をしてしまうかもしれない。二度の挫折は辛いし、怖いよね。