今日は待ちに待った金曜日!
 ……の放課後!
 気分は絶好調だ。
 私は腕時計をチラッと見た。

 ー今が十五時三十五分か。

 図書室の閉館時間が確か十六時四十分だから、
今日はギリギリまで居ようかな。

 私は軽い足取りで図書室へと向かった。
 先輩、いるかなぁ。

 ーガラッ。

「あっ、こんにちはー」

 いたー‼︎
 いや、金曜日だから当たり前なんだけど。
 先輩の存在を認識した瞬間、

 周りに聞こえてしまうんじゃないかってくらい
 心臓は脈打って、
 体も熱くなって、何も考えられなくなった。

 とりあえずっ、席に着いて落ち着こ。

 私は先輩のいるカウンターからは
少し離れた席に座った。
 あんまり近いところだと、
それだけで意識してしまいそうな気がしたから。

 相変わらず、図書室は人が少ない。
 でも、先週よりは少し増えてるかもしれない。
 私は背負っていたリュックサックを
椅子にかけると、ファスナーを下ろし、
一冊の文庫本を取り出した。
 ちょうど一週間前借りたラノベだ。
 ジャンルはいわゆる学園系ラブコメ。
結構際どい描写が多くて、
これ、高校の図書室に置いてていいのか?って
勝手に心配になってしまった。
 でも、テンポが良くて面白い作品だったから続きも借りようか迷っているところだ。

 私は席を立ち、
ラノベが集められている本棚を見に行った。
先週借りたシリーズは
最終巻の七巻まできちんとあった。
 今日はせっかく時間があるから、
時間の許す限り読み進めよう。

 とりあえず、五巻分の単行本を手に持って私は
先程の席へ戻った。

 さーて、読みますか。

 あ、その前に。

 私は本の隙間から顔を覗かせて、
カウンターの方をチラリと見た。

 篠原先輩は椅子の背もたれに体重を預け、
リラックスした状態で読書をしていた。

 肌は女子が思わず羨望の眼差しを
向けてしまいそうなほどの白さで、
鼻筋はすっと通っているし、
顔の輪郭に沿うように伸びた髪は
何もかも吸い込んでしまいそうなほどの黒だ。
瞬きをするたびに長いまつ毛が揺れる。
 やっぱり、
先輩は私の好みど真ん中の容姿の持ち主だった。
 もはや、かっこいいを通り越して、
美しさすら感じる……。

 しんとした図書室にページをめくる音だけが響く。
 

 
 はっ、
 つい見惚れてた。

いかんいかん。
 ずっと見てたら私が
ただのヤバいやつになってしまう。
 そろそろ私も本を読もうっと。