「しおりに朗報です!」
「うわぁっ⁉︎」

 帰りのホームルームが終わり、
リュックに教科書やら何やらを詰めていたら、
利湖がいきなり目の前に立って机を叩くものだから
私はそんな声を出してしまった。

 一瞬、クラスメイトの視線が
私に集まった気がしたんですが。恥ずかしい。

「あはは、驚きすぎ」
「利湖が急に大きい音出すからでしょ」
「だって、聞いてよ!」
「何?」
「先輩の名前が分かったの」
「えっ、もう分かったの?」
「うん。あとクラスもね。知りたい?」
「うん!聞く聞く。でも、心の準備が……。
十秒待って」
「オッケー。十秒ね。じゅーう、きゅーう……」

 クラスが分かったら、
文化祭の出し物も見にいけるな。
まだ、まあまあ先の話だけど。
 そもそも、
その頃まで私の先輩への『好き』っていう気持ちが
持続してるのかも怪しいけどね。

「さーん、にーい、いーーーち。
 はい、十秒経ったよ」
「えっ、もう⁉︎早くない?」
「じゃあ、言うよ。
あなたが一目惚れした先輩の名前。
しのはらけんと先輩、二年四組」
「しのはら……けんとせんぱい?どんな字書くの?」
「えっとね。
しのはらは普通の漢字で、
けんとは賢いに北斗七星の斗」

 綺麗な名前だなと思った。

 すごく先輩にぴったりな名前だ。

「利湖、マジありがとう。
この御恩は一生忘れません……。」
「いや、大げさだよ。でも、良かったね」
「うん!私ね、また金曜日に図書室行こうと
思ってる、本返さないとだし」
「良いんじゃない?
浮かれてるとこ悪いけど、
明日からテスト三週間前だよ」
「えっ、そうなの⁉︎まぁ、まだ三週間前だし。
二週間前になったら、やり始める」
「ほんとにぃ〜?」
「ほんとだってば!数学が一番ヤバいかも。
何言ってんのか全然わかんないもん」
「あぁ〜、数学ねぇ。私も苦手だわ」
「良い勉強法無いかなぁ〜」
「あっ、今の話で思い出したけどさ」
「ん?何」
「篠原先輩ってめっちゃ、数学得意らしいよ〜」
「へぇ、そうなんだ!
って、利湖ったら何ニヤニヤしてんの!!」
「別にぃ〜?」

 あの見た目で数学得意って
めちゃくちゃかっこいいな……。