今日が休日で良かった。

 昨日の夜は例の事であまり眠れなかったし、
もし、学校があったら、
私は昨日の事で頭がいっぱいで、授業どころではなかっただろう。
 あの人、何ていう名前なんだろう。
 そもそも、同級生か先輩なのかすら分からないし。
 何かあの人の事を知る手段は無いものか……。

「そうだ」

 私はクラスメイトであり、
親友の寺西利湖が図書委員であったことを思い出した。

 利湖ならあの人の名前知ってるかも……。
 私はスマホを開き、
トークアプリから利湖に発信した。
 利湖とは、
小学校時代からの付き合いで中学は違ったけど
今でも定期的に遊んだりする仲だ。


「ん?もしもし。どしたの?」
「ごめんね、急に電話して」
「なんか、しおりと電話で喋るの久々かも」
「確かに、中学の頃は結構してたもんね〜。
高校入ってからは毎日直接会って話せてたし」
「そんな事はどうでもいいの。
私に話したい事があるから、
かけてきたんじゃないの?」
「うん、じゃあもうズバリ聞いちゃうね。
利湖って、図書委員だったよね?確か」
「そうだけど。それ聞いてどうするつもりなの」
「昨日の放課後ね、私、図書室行ったの。
何か良い本無いかなーってね」
「うん。しおり、本好きだもんね」
「で、本借りようと思ってカウンターに行ったの。
そしたら、何か図書委員みたいな男子が一人だけいてそこで作業してて」
「そうそう、図書委員の仕事に
放課後の貸出業務も含まれてるからね」
「じゃあ、
やっぱり、あの人、図書委員なのかな……」
「その可能性は高いね。話、続けて。
まだどういう類の話かすら謎だから」
「そうだね、ごめん。まあ男子がいたわけ。
で、その人に本を手渡した時に目が合ってね。
もうね、単純にかっこいいなって思った」
「うん……?」
「かっこいいって思った直後から急にドキドキし始めたの。んで、パニックになって逃げるように図書室を後にしたわけ」
「一目惚れってこと?」
「そう!!そう!!まさに!」
「ちょっと、しおり落ち着いてっ」

 自分でも気づかぬうちに
興奮してしまっていたらしい。ごめんね。

「じゃあ、しおりはその人の名前を知りたいと?」
「理解が早くて助かります……」