「あ……おはようございます」

一気に現実に引き戻された。

「廊下で話すのもアレだし、教室の中入ろうか」
「し、失礼しまーす……」

先輩のクラスに足を踏み入れるなんて、
恐れ多くて私は少し躊躇した。

「そんな緊張しなくて大丈夫だよ?
俺の席はここ」

先輩が指差したのは、
一番窓に近い位置にある前から三番目の席。

「隣、座っていいよ」

とっ、隣ぃ⁉︎

「えっ、あっ、でも……」

落ち着け、私。

「遠慮しないで、
それとも。俺の隣が……そんなにイヤ?」

い、い、い、嫌だなんて‼︎
とんでもない、むしろめちゃくちゃ嬉しいです‼︎

頬杖をつき、慌てる私を微笑みながら見つめる先輩。その姿からは年上の余裕のようなものが感じられた。

「し、し、失礼します……」

これ以上勘繰られないように私は
素早く先輩の隣に座った。

あまりにも勢いよく座ったせいで、
ものすごい音が鳴ったけど。

先輩がすぐ側にいる。

手を伸ばせば届きそうだな。

勉強会の時にもっと近い距離になったことは
あったはずなのに、
今の状況はその時の何倍も心臓が高鳴っている。

教室の中っていう日常感があるからなのかな。