「じゃあ、
二学期も引き続きよろしくお願いします」
「……ごめん、柚木さん」

 え?何で先輩が謝るの?

「残念だけど、もう……会えない」

 心臓がドクドクと鳴り始めた。
 すごく嫌な予感がする。

「えっ、それ……どういうことですか」

 怖い。聞きたくない。
 でも、聞かなきゃ。

「転校することになったんだ」
「てん……こう?」

 思わず、先輩の言葉を繰り返してしまった。
 もちろん、言葉の意味は理解しているけど、
それをちゃんと理解して受け入れたくない。
 そんな気分になった。

「そう。急でごめん。
だから、俺、夏休み終わったらもうここに居ないんだ」

 申し訳無さそうに先輩が言った。
 何も言葉が出てこない。
 現実だと思えない。

「親の仕事の都合で引っ越すことになって……。
俺も伝えられたのは二週間くらい前でさ」

 もっと先輩と過ごしたかった。
 私は一年生で先輩は二年生。
 ただでさえ、一緒にいられる時間は短いのに。
 文化祭だって、
先輩のクラスに行くのを楽しみにしてた。
 一気に色んな思いが込み上げてきた。

 ……苦しいよ。


気付けば、頬を涙が濡らしていた。

「ごめんね、柚木さん」
「謝らないでください……」

 先輩は何も悪くない。
 ただ、私の先輩への気持ちが大きすぎただけなんだ。