心当たりがないわけじゃない。

 体中に異変があるのは事実。

 まるで自分の体じゃないみたい。


 血管を広げるように飛び跳ねている血液。

 過呼吸になりそうなほど荒い呼吸。



 脳内にふつふつと湧いてくるのは

 【彼の甘さが欲しい】

 【アルファの熱に浮かされたい】

 羞恥心を刺激するような欲望で。


 こんなはしないことを思うこと自体、過去に一度もなくて。

 本当に自分はオメガかもと思ってしまうくらい、体中が火照っている。



 どうかしてたのかな?

 荒くなる呼吸を鎮めるすべを知らない私は、彼のお願いに素直に頷いてしまったんだ。


 「今日は話をするだけのつもりだった。でも先に謝っておくよ。ごめんね。琉乃ちゃんの甘さ、堪能させて」


 切な声を洩らされたから、つい。

 小さくコクりって。