お願い止まって、私の脈。

 いや、それはダメだった。

 死なない程度に鎮まって、お願い。


 「俺のオメガフェロモンが琉乃ちゃんの血液と混ざり合っていることが、細胞レベルで嬉しいんだね」


 脈の気持ちなんてわからないよ。


 今度は唯都様の人差し指が、私の首の側面に沈み込んだ。

 ゆっくり滑る長くてきれいな指。

 私の首にハート軌跡を残していく。



 「なんでわからないかな? 運命のアルファにオメガの急所を無防備にさらしちゃダメって」


 だから私はベータで……


 「私を食べてとおねだりしているのと、同じだことだからね」



 フッと笑った唯都様の声が、脳内で困惑を生む。

 私がおねだり? 


 恥ずかしさでギューッと縮こまる気管。

 声が出ない代わりに、私は真っ赤な顔を左右にブンブン振った。



 「俺と番になりたいんでしょ? いいよ。俺の全てを琉乃ちゃんにプレゼントしてあげる。永遠の別れがくるまでたっぷりと愛してあげるから、溺愛される覚悟をしてね。今すぐに」



 なんか話がおかしな方向に……



 もしかして唯都様、ラット状態に入ってしまったのでは?

 オメガフェロモンにあてられたアルファが、オメガをむさぼりたい欲にかられ暴走しちゃう……あのラットに……