「……えっ、私がですか?」


 「今の琉乃ちゃんの表情、君に見せてあげたいな」


 どんな顔をしてる? 

 この部屋に鏡がないかわらわらない。


「顔がほてっていて。目がトロンとして。呼吸も荒くて。吸い込んだ俺のフェロモンが、琉乃ちゃんのフェロモンと溶け合っている証拠だね」



 確かに……

 体がおかしいとは思う、普通じゃない。


 脈が騒いでいる。

 体中の血液までもがザワザワって。

 でもでも


 「トップアイドルの最推しが目の前にいたら、誰だって顔が赤くなっちゃいます」



 そうだ、これはファン特有の反応だ。

 気品あふれる王子様みたいな唯都様に見つめられたら、誰だって……



 「ちょっとごめんね」


 「ひゃっ!」



 頭が引き寄せられた。

 オスを感じてしまうくらい、かなり強引に。


 私のほほが沈みこんだのは唯都様の胸元で、彼の肺が膨らむのがわかる。

 鼻をこすりつけるように、後頭部の匂いをかがないでください。

 頭皮がくすぐったい。なんか恥ずかしい。