冴ちゃんも総長様も、私のために陰で動いてくれていたんだね。

 友情って良いな。友達って暖かいな。

 娘を使用人扱いしてくる冷徹な私の家族と、全然違う。

 ジーンとうずくハートに手を置くと、うれし涙が滲んだ。




 居ても立ってもいられない。

「今すぐ冴ちゃんのところに言って、お礼を伝えなきゃ」

 さっそくふりかえって玄関ドアとご対面。

 このまま外へと思ったけれど、私の足はピタリ。

 後ろから手首を掴まれ、ビクリと心臓が鳴る。



 「ねぇ琉乃ちゃん、俺の前からいなくなる気じゃないよね?」



 ひぃえ!

 私の背中を震わせるほどのゾンビ声。



 「やさしい琉乃ちゃんは、俺たちの努力と好意を踏みつぶしたりしないよね? 二人だけというこの瞬間に心から感謝をして、俺と一緒にいるよね? たくさんおしゃべりしてくれるよね? そうだよね?」



 ひぃえぇぇぇ……

 アイドルと思えないほどのガラガラ声。

 怖くて振り向けない。