心のザラザラが薄らぐにつれ、潜在していたドキドキに意識が向く。
推しと煌びやかな空間に二人だけ。
心臓が肌を突き破らないか心配なほど飛び跳ねてしまうのは、むしろしょうがない。
初めて出会ったライブの時もそうだった。
高熱で寝込んでいる時に似た、脳のふわふわ感に襲われて。
瞳がとろん。
顔じゅうのほてりが一向にひかない。
唯都様の綺麗な、手が私の左ほほを包み込んだ。
ほてった私の顔の熱をさらってくれる。
ひんやりして気持ちがいい。
白いタキシード姿の唯都様は、まるで姫を寵愛する王子様のよう。
うっとりと優しく微笑みながら
「会いたくてたまらなかった君が、今、俺の瞳にちゃんと映ってる。この幸せを紡いでくれた二人には、感謝してもしきれないね」
宝物をめでるように、親指の腹で私のほほを撫でてくれたんだもん。
私も幸せですと、口からこぼしそうになったものの……
ん?
「幸せを紡いでくれた二人?」
違和感ありありワードに、私の脳が一気に冴えわたる。