「あわっ、急に押さないでよ冴ちゃん」


 バランスを崩しながらポニーテールを振り乱す私なんてお構いなし。


 「遠慮せず、さぁさぁ中へ」


 手に力をこめた冴ちゃんは、建物の中に私を押し込むと


 「では琉乃姫、ハートがとろける贅沢な時間をお楽しみくださーい」


 満面の笑みで両手ヒラヒラのバイバーイ。



 ドアがバタン。

 鍵がガチャリ。


 あれ? これはいったい……

 建物の中に、一人閉じ込められてしまったのです。




 慌ててドアノブを掴む。ひねる。

 ダメだ、ドアが開かない。

 鍵はどこ? 

 このドアの施錠、どういう仕組みなの?



 外へ出ることをあきらめた。

 楽しいことが大好きな冴ちゃんのことだ。


 しばらくしたらドアが開き


 『ドッキリでした。どう、楽しかった? さみしかった? 怖かった?』


  なんて笑いながら、私の頭をヨシヨシしてくれるに違いない。