「待ちなさい! こんな高級住宅街にパトカーなんか来たら、我が家がよそ様からどんな目で見られるか……」
「じゃあ放課後に娘が友達と遊びに行くぐらい、許可してやるよな?」
「……っ」
「私は親友の琉乃と、海を見ながらのバイクデートを楽しみたいだけ。可愛い娘のためにOKしてくれるよね? 琉乃のお母様」
「あーもう! わかったわ。琉乃、遊びに行ってらっしゃい」
傲慢で自分を女王様だと思ってるお母さんが、敗北者に見える。
背中を曲げ、気まずそうにうつむいているから。
冴ちゃんたちと出かけていいって、言ってくれたけど……
「お母さん、私まだ夕飯の準備ができていなくて……お風呂掃除も手をつけていなくて……」
私がやらないと、家族が困っちゃうよ。
「琉乃、いい? 神楽の名を汚すような遊び方はしないこと。人様に迷惑をかけないこと」
「お母さん、本当に遊びに行ってきていいの?」
友達と遊ぶのなんて、小1の時にベータ診断されてから初めてだよ。