手を確認するお母さんに、今度は冴ちゃんが吠える。



 「家事をしない人には何のことかわからないでしょ? 琉乃の手はね、年中荒れっぱなしなの。肌がガサついていたり、赤く切れてたり。あまりに痛々しくて、私たちクラスメイトがクリームを練りこんであげているんだから」
 


 「でも神楽の母親の手は違う。肌荒れどころか傷一つない。家事は人任せ。楽をして生きている奴の手だ」



 総長の鋭い眼圧をスルー出来るお母さんも、メンタルが鋼なのかもしれない。



 「私はちゃんと手のケアをしているわ。家事の時は手袋をつけるべきよ。でも面倒さがりやの琉乃はつけない。手の綺麗さはその違いよ」


 自信満々に、透き通った手のひらをあえて総長に見せつけている。



 総長はイライラの限界ギリギリにさしかかっているのだろう。

 額の血管が切れそうなほどの怒り顔で、今度は私の顔を指さした。
 


 「じゃあ神楽の頬は?」


 「頬?」と、首をかしげるお母さん。


 「神楽の頬がうっすらアザっぽくなってる時が、何度もあった」