道路のに面した門から、屋敷の庭に私の足が着地した時だった。
制服のズボンに手を突っ込んだ総長が、ぶっきらぼうな声を放ったのは。
「もしかして神楽家のあの噂って、マジなわけ?」
「うわさ? 我が家の?」
と即座に反応したのは、世間体をこれでもかというほど気にするお母さん。
「噂ってなんのことよ!」
私の手を跳ねのけながら振り返り、焦り顔で総長に駆け寄っている。
「俺の耳に入ってきたのは、神楽家は金持ちぶってるけど借金まみれ。使用人を雇っていない代わりに、娘ひとりに家事を押し付けているって話」
「だっ、誰がそんなことを」
「だいの大人が目を見開いて取り乱すなんてな。ウワサはその通りってことか」
「そそっ、そんなわけないでしょ? 勝手な勘違いはやめてちょうだい。我が家はね、私も理亜も琉乃も家事が好きなの。大好きなだけなの」