「冴の怪力で、家の鏡を全部バリバリに割ったんじゃないだろうな?」


 「毎朝高校に行く前に、鏡ぐらい見ますけど! ほんと酷い。鷹哉は私を女だって思ってないのね!」



 「ふっ二人とも……とりあえず落ち着こうか……」

 

 冷や汗たらりで二人をなだめてはみるものの、総長と姫の喧嘩の炎は燃え盛るばかり。

 過去の怒りエピソードまで飛びだす始末。



 やめてよ……

 我が家の門の前で、恋人ゲンカなんて……


 
 「俺は見たいって言ってんの!」


 「私が拳でドアを割りまくるところでも見て、野蛮な女だってケチつけたいんでしょ」


 「そんなこと言ってないだろ!」


 「違うなら、何を見たいか言ってみなさいよ」



 あっ、総長の瞳の怒りが弱まった。

 恥ずかしそうに視線を逃がして、首のうしろをかいている。