雑巾を放り投げ、掃除道具たちも放置。
くるぶしまであるメイド服のスカートをつまみながら、私は階段を駆け下りる。
玄関の外に出てみた。
バイクが止まっている門までは50メートル以上ある。
さすが世間体を気にするお母さん、私よりも先に屋敷から飛び出していた。
広い庭を駆ける姿は、まるで世界陸上のメダリスト。
疾風のごとく門の外に到着。
「あなたたち我が家の前で何やっているの! 今すぐ帰ってちょうだい!」
お母さんは声を荒らげながら、制服姿の2人を手でシッシと追い払っている。
でもこの2人のメンタルは強すぎる。
異常なほど強度があるダイアモンド。
一般人の怒鳴りなんて怖いはずもなく
「は? 俺ら、おばさんに会いに来たんじゃないんだけど」
「琉乃はどこ? 今すぐ会わせて!」
氷漬けにしそうなほど冷酷な目を、私のお母さんに突き刺している。