えっ? 

 借金帳消しのために、私は売られるの?

 嫌だよ……



 『せめて……何度かお会いして……お互いが気に入ったら恋人から始めましょうくらいのスタンスで……』


 『琉乃、何を言ってるんだ! ベータのオマエに拒否権なんかない!』


 『一生気に入ってもらえるように、ご主人様のために尽くしなさい。いいわね!』



 威圧感のある両親に怒鳴られたら、逆らえるはずもなく……



 『……わっ、わかりました』



 しぶしぶ私は、婚約の話を受け入れてしまいました。




 人身売買? 

 合意なく娘を売るなんて、犯罪じゃないの?



 そう思っちゃうけれど……

 我が家の家庭裁判所は、両親が法律。

 両親の意見が絶対で。

 世間の常識を引き合いに出して説得しようとしても、どうせ怒鳴られるだけ。



 『誰がオマエに飯を食わせてやってると思ってるんだ!』


 『神楽家にベータとして生まれてきた時点で、あなたは神楽家の汚点なの。面汚しなの。罪人なの。私たち家族への罪滅ぼしとして、私たちの指示に従うのは当然のことだわ』


 親に愛されていない現実を突きつけれて、みじめな思いをするのは目に見えている。