あの時の父と母の取り乱し方は、見苦しいレベルだったな。



 『俺達から生まれた子は絶対にαなんだ! 神楽家は代々、高貴なアルファしか生まれないんだぞ!』


 『ヤブ医者の診断なんて信じられないわ。名医がいる病院で検査しなおしてもらいましょうよ!』



 たんかをきって、娘の私を金持ち御用達の大病院に。

 連れて行ったは良いけれど、結果は同じ。

 この世のほとんどの人が該当する『ベータ』だと、そこでも断言されたらしい。

 

 家柄と世間体にこだわる父と母にとって自分の娘は、優秀と称される『アルファ』以外は許せなくて。

 普通人間のベータの娘の存在を、受け入れられるはずもなく……



 『俺たちの娘は、アルファの理亜(りあ)だけだ!』


 『使用人としてなら、あなたをこの家においてあげてもいい。琉乃、今ここでどうするか決めなさい!』



 父と母に逆らうのが怖かった小1の私。

 泣く泣く使用人という立場を、受け入れてしまったんだ。