ベータの私はフェロモンを放たない。

 だから唯都様の姫なんてありえない。

 普通人間のベータじゃなく、あらゆることに秀でているアルファなら、エンラダメンバーに気に入られるのも納得だけど。



 『俺の姫』



 甘さ混じりのオス声で紡がれた蜜甘ワードが、脳だけじゃなく私の全身に回ってしまったせいだろう。



 血が沸騰するような

 心臓が爆ぜてしまいそうな

 今まで経験したこともないバクバクに、呼吸までもが荒くなってしまう。



 これは夢なんだ。

 間違いない。

 推しが目の前にいるなんて、絶対にありえないもん。

 とりあえず視界を真っ暗にして、おやすみなさい……



 現実逃避が最適解と、まぶたをギュってつぶってみたものの